中国人名と韓国人名
2003年1月10日
宇佐美 保
中国人名は、いわゆる私たちが使用している漢字読みなのに、何故韓国人名は、韓国の現地読みなのでしょうか?
私は、ある時期に日韓間に条約成立して、以来、“人名を両国はお互いの現地読みをする”と記憶していたのですが、若干記憶違いでした。
NHKに教えて頂いた結果は、次の通りでした。
1)日中間の人名の読み
1972年(昭和47年)9月、当時の田中角栄首相が中国を訪問し周恩来首相との日中国交回復の会談の際に、日中両国の人名は、互いに、読む人の国の読み方(日本では、周恩来はシュウオンライとの如くに)を従来通りに継続することで合意した。
2)日韓間の人名の読み
1984(昭和59年)韓国の全斗換大統領が来日し、日本の政府高官たちとの会談の席上、両国の要人の名前を、お互いに現地読みすることで合意した。
その結果、金大中氏が、「キンダイチュウ」から「キム・テジュン」に変わった訳です。
北朝鮮との関係もそれに倣っている。
従いまして、最近日本のテレビでも流される、北朝鮮のニュース番組の中では、小泉首相の名前も、声高に「コイズミ」と発音されているのに気が付くでしょう。
ただし、オリンピックなどの国際的イベントでは、中国名といえども、国際標準に照らし合わせて、中国読みで放送している、との事でした。
更には、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の呼称の謂れも教えてくれましたが、この件は、1月9日の朝日新聞にも次のように紹介されています。
即ち、札幌冬季オリンピック(1972年)の前年に開かれたプレ五輪をめぐり、北朝鮮は正式な国名で呼ぶよう五輪組織委員会に申し入れた。日本新聞協会でも議題になり、加盟各社は、記事の初出は併記、2度目からや見出しは北朝鮮とするようになった。
読者や視聴者からは「ほかの国は略称だけなのに、なぜ北朝鮮だけ正式名称を使うのか」といった疑問や批判がしばしば寄せられた。……
(追記)
この「中国人名と韓国人名」につきましては、NHKの前に、朝日新聞の広報部、外務省にも問い合わせました。
1)朝日新聞の広報部の回答
時代の趨勢が、現地読みとなっている。
質問:では、何故、中国人名は日本読みなのですか?
朝日:中国では、地方によって読み方が違うからです。
質問:でも、ご本人自身の読み方があるはずです。
朝日:沈黙
2)外務省の回答
時代の趨勢が、現地読みとなっている。
質問:では、何故、中国人名は日本読みなのですか?
外務省:そのうちに現地読みに移行すると思います。
私は、不安になりました。
まあ、朝日新聞の広報部はともかくといたしまして、外務省(アジア局だったでしょうか?)の方が、親切に電話で応対して下さったことは感謝しますが、人名の呼称についてしっかりした認識を持たれていなかったのですから。
私の苗字は「宇佐美」ですが、私の苗字を、時々「宇佐見」と書かれる方も居られます。
そんな時、(私が絶世の美男美女の類でしたら、私の名前は「美」と書いてください!と怒鳴るかもしれませんが、そうでもありませんから)、私は“あれ!間違われてしまった。でもまあ、私の本心を判って「宇佐見」と書かれたのかしら、なにしろ、私は「見たり」(特に、「覗いたり」)するのは大好きですから、「美」より「見」と書いたのかしら?(本物の「宇佐見」氏には申し訳ありませんが)”で済ましていました。
ところが或る時、(今は亡き)作曲家の團伊玖磨氏の文章を呼んで吃驚しました。
なにしろ、團氏は、“私への手紙の宛名が「団」と書かれた手紙は読みたくない。しかし、最近は、ワープロの世の中になって、「團」の字が使えないワープロもあるようなので、少しは諦めてはいるが……”と書かれていたのですから。
更にもっと驚いたのは、私の(今は亡き)恩師(元東工大学長)齋藤進六先生も、「齋」の字ではなく「斉」だのの略字を使われることを嫌っていたことを後年知って吃驚しました。
(私は勿論、常々「斉」の字を使って先生に手紙など出していました(なにしろ、「齋」という字は書けませんでしたから))
なにしろ、齋藤進六先生は、宇宙環境利用委員会委員長、宇宙開発事業団スペースシャトル利用委員会委員長、(社)日本セラミックス協会会長等など、最新技術分野のお仕事に携った居られたのですから、(横文字でも御自身の名前は書かれる事などをも思うと)御自身の苗字が、「齋」と書かれようと「斉」と書かれようと全く気にされないと思っていました。
ところがそうではなかったのです。
苗字(や国名など)は、当事者(人によっては)と第三者ではその思い入れが全く異なることに愕然とするのです。
ですから、北朝鮮を「朝鮮民主主義人民共和国」と呼び続けたマスコミを私は決して、弱腰であったなどと、非難はいたしません。
それどころか、石原都知事が「中国」を中国側が嫌がるのに「シナ」と呼称し続けた行為は、とても浅はかで、石原氏はとてもこの国を統治する器ではないと思っております。
更に又、「中国人名と韓国人名」の呼称の謂れに対して無頓着な外務省にも、この国を任すことは出来ないと感じました。
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